刀以外にも、歌舞伎のなかにはさまざまな書画骨董や調度品などが登場するので、アイウエオ順でご紹介。これらも、刀と同じように宝物として騒動を引き起こす。ことに和紙や絹に書かれた書画は騒動の種になりやすい。掛け軸として鑑賞されるが、保管にはコンパクトに巻いて桐箱に収められるので、外見からは中身はわかりにくく、悪人に中身を抜かれたり、偽物とすりかえられたりしやすく、それが事件の種となる。香炉や茶道具など箱入りの道具類も、すり替えられやすい。『番町皿屋敷』では、腰元お菊が、青山播磨の心を試すため、わざと家重代の高麗焼の皿を割る。ここには宝物よりも大切なのは心という、新歌舞伎らしい視点がある。(前川文子)
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『番町皿屋敷』腰元お菊(中村芝雀) 平成27年1月歌舞伎座