らんじゃたい 蘭奢待

聖武天皇の御代に中国から伝来したと伝わる香木で、東大寺正倉院に現存するまさに日本古来の宝物。伽羅(きゃら)の一種と言われ、正式な名前は黄熟香(おうじゅくこう)、雅号の「蘭奢待」には「東大寺」の文字が隠れている。足利尊氏や、織田信長、明治天皇ほか時の権力者などが切り取ったと伝わる数十カ所の切り痕がある。『加賀見山旧錦絵』では、館の息女大姫の剃髪の儀式のために蘭奢待が焚かれることになっていたが、お家乗っ取りを企む悪者に盗まれ、草履とすり替えられる。(前川文子)

【写真】
『加賀見山旧錦絵』中老尾上(坂東玉三郎) 平成17年10月歌舞伎座