りぎょのいちじく 鯉魚の一軸

「隅田川物」に登場する鯉の滝登りの様を絵に描いた軸物。『雙生隅田川』では漢の武帝が描いたと説明されている。鯉には眼が描かれておらず、眼を描くと鯉が絵から抜け出て池に躍り込んで暴れる。公家の吉田家はこの一軸を紛失したためお家断絶。『隅田川続俤~法界坊』では、吉田の嫡子が道具屋の手代に身をやつしてようやく一軸を手にするのだが、箱に収められた鯉魚の一軸が、悪者に愚にも付かない偽物とすり変えられてしまう。(前川文子)

【写真】
『隅田川続俤』法界坊 手代要助(中村錦之助) 平成26年9月歌舞伎座