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歌舞伎の宝物で一番出番が多いのは刀剣。戦のなくなった江戸時代の武家社会では名刀は恩賞のほか献上品、贈答品として扱われ、大名諸氏は競って古来の名刀を集めたという。刀剣愛好者の世間では常識的なことだが、古来の名刀は、かつて朝廷に反抗する部族を退治したとか、源氏や平家の宝刀であったとか、足利将軍や太閤秀吉が所持していたとか、様々なエピソードがいっぱい付いている。それが宝物の必要条件とも言えるだろう。
平安時代に、源頼光が大江山の酒呑童子を切ったと伝わる太刀「童子切(どうじきり)」、渡辺綱が羅生門の鬼を切った「鬼切(おにきり)」、戸隠山の鬼女と戦った「小烏丸(こがらすまる)」などは刀剣史上にきわめて名高い。もちろんこれらのエピソードは歌舞伎でも有名な作品になっている。しかしこれにとどまらず、様々な名刀が舞台には登場している。現代の刀剣辞典などには見あたらないが、歌舞伎のなかでは大変有名な刀というのもある。
刀工の世界を描いた名作歌舞伎としては『新薄雪物語』がある。鎌倉時代に実在した山城国の名工来国行(らいくにゆき)と、その息子国俊(くにとし)、そして鎌倉の名工正宗(まさむね)との師弟関係が描かれるが、この師弟関係というのはフィクション。作刀の上での秘伝の湯加減などが見せ場になる。
刀工は自身の銘(めい=サイン)を柄(つか)に隠れる茎(なかご)の部分に刻むが、銘を刻むかどうかは作者の心境によるのだとか。名作でも銘がないこともある。鑑定者は無銘でも刀身の姿、焼き、刃紋などの特徴を吟味して名刀を鑑定するという。『梶原平三誉石切』に登場する梶原平三は、刀の目利きとして、無銘ながら源氏にゆかりの刀を名刀と鑑定し、証しとして、その刀で手水鉢を鮮やかに切り捨てる。(前川文子)

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