歌舞伎の舞台で演奏される音楽は、大きく分けて唄物の長唄囃子と、語り物の義太夫節や常磐津節、清元節などの浄瑠璃があります。
長唄囃子連中による出囃子は、舞台正面に緋毛氈を敷いた雛段に居並んで演奏します。普通は上段に長唄の唄方と三味線方、下段に太鼓・大鼓・小鼓・笛の囃子方が並びます。ただし、新しい演出であえて雛段を避けて下手や上手で演奏したり、緋毛氈を用いず、ほかの色の毛氈を用いることもあります。
義太夫節は歌舞伎では竹本といい、上手揚幕の上の床(ゆか)で、太夫と三味線方が演奏します。このとき、御簾を下げてその内で演奏する場合と、御簾を上げて姿を見せて演奏する場合があります。また、義太夫狂言の重要な場面で、上手側の「太夫座(太夫床ともいう)」で姿を見せて演奏する(「出語り」という)こともあります。常磐津節や清元節の演奏も「出語り」といい、ふつうは山台の上で演奏します。位置は下手側もあれば上手側の場合もあり、必ずしも一定していません。なお、出囃子や出語りで演奏家が舞台に出て演奏する場合、演奏家を地方(じかた)、その前で踊る俳優を立方(たちかた)といいます。そのほか、大薩摩、余所事浄瑠璃(よそごとじょうるり)、唄浄瑠璃、送り三重、黒御簾音楽についは、別項の解説をご覧ください。(浅原恒男)