ほんもの 本物

実際に江戸時代の日常生活で使われていたもの。手ぬぐい、茶碗、湯呑、煙管など、現代でも使われているものも多いが、江戸の庶民がふつうに使っていた食器などのデザインは現代の食器店にあるものとはまったく違うので、小道具係や俳優が地方の古道具屋などを探して入手し、それを模して新たに作ることもあるという。また、例えば行灯や煙草盆、火鉢と炭入れや火箸、『東海道四谷怪談』で使うせんべいぶとんや蚊帳なども、今では入手困難だろう。
『都鳥廓白浪』には、松若丸が茶碗で本物の飯を食べながら捕手と立廻りをする「おまんまの立廻り」と呼ばれる趣向がある。(橋本弘毅)

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おはまが片口で酒を注いだ湯呑で飲み始める宗五郎
『新皿屋舗月雨暈』魚屋宗五郎 [左から]宗五郎女房おはま(中村時蔵)、魚屋宗五郎(尾上菊五郎)平成29年5月歌舞伎座