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ろっかせんのせかい 六歌仙の世界

六歌仙とは、平安時代の勅撰和歌集『古今和歌集』仮名序に挙げられた僧正遍照(そうじょうへんじょう)、在原業平(ありわらのなりひら)、文屋康秀(ふんやのやすひで)、喜撰(きせん)法師、小野小町(おののこまち)、大伴黒主(おおとものくろぬし)の六人の歌人を指します。その代表作が『六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)』で、義太夫・長唄・清元による変化舞踊です。僧正遍照が小町を訪ねてきてすげなく振られて帰り、美男で優男の在原業平も、剽軽(ひょうきん)な公卿の文屋康秀も小町に袖にされます。黒主は天下を狙う謀反人として、小町に正体を見破られます。紅一点の小町は美人でありながら、恋が成就しない孤独な女です。『古今和歌集』仮名序に「大伴黒主はそのさま賤し。いわば薪負へる山人の花のかげに休めるがごとし」という評言があり、このイメージをそのまま形象化したのが『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』の関兵衛です。登場人物は良岑宗貞(よしみねのむねさだ。のちの僧正遍照)と小町。ここでも黒主は天下を狙う謀反人で、逢坂山(おうさかやま。現在の京都府と滋賀県の境)の関守関兵衛に姿をやつしています。かつて宗貞の弟で黒主に殺された安貞(やすさだ)と愛しあった小町桜の精が、傾城墨染の姿で現れ、黒主の正体を暴きます。歌舞伎の「六歌仙の世界」は『古今和歌集』の典雅で高尚な世界を江戸の洒落と見立てと諧謔の美学で再構築した世界なのです。(安冨順)

【写真】
『積恋雪関扉』[左から]関守関兵衛実は大伴黒主(松本幸四郎)、傾城墨染実は小町桜の精(尾上菊之助) 平成27年2月歌舞伎座
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