江戸浄瑠璃の一派で享保年間に十寸見河東(ますみかとう)が創始、江戸節とも呼ばれて鷹揚で華麗、江戸気分豊かな曲想が特長ですが、文化文政期以降は常磐津、富本、清元といった豊後節系浄瑠璃に押され衰退してゆきました。現在も数十曲が伝えられていますが、芝居に関連して使われるのは市川團十郎家が『歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』を上演する際、助六の花道出端のところで舞台正面御簾内で語られるのみです。その際「河東節十寸見会御連中」として日替わりで並びますが、主に他の邦楽の心得がある旦那衆や奥様方が中心となっています。(金田栄一)
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『助六由縁江戸桜』三浦屋格子先の舞台面。正面の格子の中で河東節が演奏される。
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『助六由縁江戸桜』三浦屋格子先の舞台面。正面の格子の中で河東節が演奏される。