1. 用語
  2. 歌舞伎の音楽
  3. 黒御簾(下座)音楽
  4. 黒御簾(くろみす)音楽の用法と演出(一)幕開き

黒御簾(くろみす)音楽の用法と演出(一)幕開き

黒御簾音楽は主に幕開き、人物の登退場、芝居の一場面や情景、特殊な演出などに、それぞれ決まった曲が演奏されます。幕開きの曲はこれから始まる芝居の場面や雰囲気をつくります。一例を挙げると、御殿の場なら優雅な「琴唄」(「逢う瀬嬉しき添い寝の枕……」など)。田園風景なら鄙びた「在郷唄」(「隣柿の木は……」など)。街道なら「馬子唄」。山中なら「山おろし」。海辺なら「浪音」に「浜唄」(「磯のなぁ……」など)。廓なら「騒ぎ」や「唄入り踊り地」など。町中では「稽古唄」や「通り神楽」「角兵衛」など賑やかでせわしない雰囲気を。貧しい長屋や浪宅ではわびしい「四ツ竹唄入り」(「東上総のいちみのこおり……」など)。立派な神社や寺社なら「鈔天(しゃでん)唄入り」「花降りて唄入り」。大きな社寺の門前の賑わいは「どうぞ叶えてくだしゃんせ……」。うらさびしい古寺や墓地では「禅の勤め」「木魚合方」など。(浅原恒男)

【写真】
『仮名手本忠臣蔵』大序 平成21年11月歌舞伎座
『仮名手本忠臣蔵』の幕開きは、口上人形が引っ込むと「チョンチョン」と柝が打たれ、「ピー!」という能管の響きとともに、荘重な「天王建ち下り端」(てんのうだちさがりは)という黒御簾の鳴物にかかり、能管と締太鼓による身の引き締まるような演奏とともにゆっくりと定式幕が引かれていく。
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