ころしば 殺し場

歌舞伎で殺しが行われる場面は凄惨ながらも美しく様式化され、三味線・鳴物の音楽に合わせて本来激しいはずの動きも誠に緩やかです。刀のほか、傘、懐紙、行灯など象徴的な小道具を効果的に生かして、ところどころで美しく形が極まり、殺しをおこなった人物に悪の華を感じさせるのも歌舞伎表現のひとつです。舞踊劇の『かさね』や『法界坊』『伊勢音頭』などのほか、『夏祭浪花鑑』の「長町裏」では殺される側の義平次を泥だらけにして究極の凄惨さを見せます。(金田栄一)

【写真】
『夏祭浪花鑑』[左から]団七九郎兵衛(中村吉右衛門)、三河屋義平次(市川段四郎)平成23年6月新橋演舞場