獅子はライオンが元となった伝説上の霊獣で中国の清涼山(せいりょうざん)に生息すると伝えられます。獅子は仏教では文殊菩薩の乗物とされ、清涼山にかかる現世と浄土をつなぐ石橋の下は千尋の谷があり、人は渡れません。先行芸能の能には『石橋(しゃっきょう)』という獅子物の曲があり、その影響を受けた歌舞伎舞踊がたくさん作られています。古くは『枕獅子』などの女方舞踊がありましたが、時代が下がると立役も演じるようになり、明治以降には『鏡獅子』『連獅子』といった大曲が出来上がりました。獅子物あるいは石橋物と呼ばれるジャンルとして定着し、今もよく上演されます。特に後半で獅子の毛を大きく勇壮に振る「狂い」の場面が圧巻、常に観客を沸かせます。(金田栄一)
【写真】
『石橋』獅子の精(市川染五郎) 平成27年4月歌舞伎座
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『石橋』獅子の精(市川染五郎) 平成27年4月歌舞伎座