せんだち(せんだつ) 先達

日本古来の山岳信仰と外来の密教や道教などが習合した修験道では、深山に入って修行する「峰入り」を重視した。奈良時代に葛城山や吉野の大峰で修行したという役行者(えんのぎょうじゃ)の説話があり、平安末期には熊野詣が流行。奥羽の羽黒山、富士山、浅間山なども霊地として信仰された。この峰入りの作法に通じた修験者(山伏)が一般の入峰者を集め、先導して案内したことから先達といわれた。『勧進帳』の弁慶は、関を通ろうとする山伏一行の先達である、という建前である。(小宮暁子)

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『勧進帳』武蔵坊弁慶(中村吉右衛門) 平成17年9月歌舞伎座