じょうしきまく 定式幕

歌舞伎独特の三色の引幕を定式幕といいます(定式とは「いつも使うもの」という意味)。上下に開閉する緞帳(どんちょう)は世界的に使われていますが、横に人力で引かれる引幕は歌舞伎独特といって良いでしょう。横長の歌舞伎舞台に合った幕で、拍子木に合わせてゆっくりと幕が開いていくところは、絵巻物をひもとくときのワクワクする期待感が味わえます。現在、歌舞伎座の定式幕の布色は左から黒・柿色・萌葱(もえぎ=濃い緑)、国立劇場は黒・萌葱・柿色の並びですが、これは江戸三座と呼ばれた森田座・市村座のスタイルを踏襲しています。一方、中村座は黒・白・柿色でこれは初代中村勘三郎が将軍家から賜った配色とされ、こちらの方が元祖です。このスタイルは近年、平成中村座で使用されています。(金田栄一)

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定式幕(歌舞伎座)