とうけん 刀剣

刀は頻繁に登場する。古代の神話から江戸の世話物まで、登場人物の身分や性格によって、さまざまな刀剣が使われる。江戸時代の武士なら、通常は大小と呼ばれる本差(大刀)と脇差(長さ一尺以上の小刀、一尺は約30センチ)を腰に差すのが正式であるが、浪人は本差一本だけ差していることもある。大名が正装で儀式に臨む場合などに差したのは、殿中差しと呼ばれた短刀(ちいさがたな)。小刀よりも短く、争う意思のないことを示す装飾的な刀であった。『仮名手本忠臣蔵』三段目の殿中刃傷で使われるのが、この殿中差し。四段目の判官切腹で使われる刀も「九寸五分」で、一尺に足りない長さである。
荒事では、力強さを強調するために特別に大きな刀を差す。『暫』の鎌倉権五郎のように極端に大きな刀を使ったり、『菅原伝授手習鑑』の梅王丸のように三本太刀を差すこともある。
歌舞伎の舞台で使われるのは作り物だが、『梶原平三誉石切』のように刀にリアリティがある方が映える演目の場合は、本身と呼ばれる本物の刀(刃は引いてあり斬れない)を使うこともある。
大刀の鞘には、通常小柄(こづか)という小さな刃物がついている。小さく刃も薄いため、通常はナイフのように使われるが、手裏剣のように相手に投げて使うこともある。『源平布引滝~実盛物語』で、斎藤実盛が平家方に注進に行こうとする矢走の仁惣太に投げつけて倒すのもこれ。また、鞘から少し刀身を抜いて、小柄を刃に当てるしぐさをすることがある。これは金打(きんちょう)と呼ばれる武士の作法で、決して約束を違えないと誓う表現である。(橋本弘毅)

【写真】
『寿曽我対面』工藤祐経の刀と刀掛け