よそごとじょうるり 余所事浄瑠璃

男女の哀切な場面や物思いにふける場面などで、どこからともなく聞こえてくる清元などの音曲、それを効果的に演出として取り入れたものが余所事浄瑠璃です。概ね隣家や近所で繰り広げられる座敷の宴会や稽古事の様子が漏れ聞こえてくるといった状況で、その優雅な音色が緊迫した場面をより際立たせます。『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』大口寮の片岡直次郎と三千歳(みちとせ)の逢瀬では「忍逢春雪解(しのびあうはるのゆきどけ)」が、『花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)』の十六夜(いざよい)と清心の心中場面では「梅柳中宵月(うめやなぎなかもよいづき)」という清元が余所(よそ)から聞こえてきて、その場をしっとりと包み哀愁を誘います。(金田栄一)

【写真】
『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』 昭和37年1月新橋演舞場
『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』大口寮の場で、片岡直次郎と三千歳(みちとせ)の逢瀬に近所から清元の演奏が聞こえてくる。