しんじゅうもの 心中物

心中とは、思いの叶わぬ男女が互いに手を取って死出の道を選び、あの世で結ばれることを願うものと考えてよいでしょう。その根底には現世では結ばれなくとも来世で結ばれると固く信じられた仏教的教えと世相があります。特に近松門左衛門によって元禄期に書かれた『曽根崎心中』から空前の心中ブームとなり、近松の『心中天網島』『心中宵庚申(しんじゅうよいごうしん)』などをはじめ様々な作者によって数多くの心中物が登場しますが、さらに瓦版や講釈などの派手な喧伝とも相まって心中そのものが流行、やがて幕府から情死事件の厳しい取締りと心中物の禁止令が出されます。(金田栄一)

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『曽根崎心中』[左から]天満屋お初(坂田藤十郎)、平野屋徳兵衛(中村翫雀) 平成26年4月歌舞伎座