かすみまく 霞幕

白い横長の幕に水色で霞のたなびく模様が描かれたシンプルな幕。主に常磐津や清元などの浄瑠璃の演奏者を隠す場合に用いられます。霞幕を取り去るとすぐに浄瑠璃が始まり、浄瑠璃が済むと霞幕で隠すなど、すみやかな転換ができます。また『白浪五人男』の大屋根の立廻りや『南総里見八犬伝』の芳流閣の立廻りなど、高所や遠方を望む場面にも使われています。霞の模様は古くから絵巻物や浮世絵で、遥か遠景を望む表現や余計な部分を隠すのによく使われる日本伝統の手法です。(金田栄一)

【写真】
『青砥稿花紅彩画』弁天小僧菊之助(尾上菊五郎) 平成20年5月歌舞伎座