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せいげんさくらひめのせかい 清玄桜姫の世界

清水寺の高僧清玄は桜姫の美しさに魅せられ、破戒・堕落の末殺害されますが、その執念は幽霊になっても姫に付きまといます。これが「清玄・桜姫の世界」の基本的モチーフです。実説は不明ですが、古浄瑠璃の正本『一心二河白道』(いっしんにがびゃくどう)が1673(寛文13)年に出版され、1698(元禄11)年には近松門左衛門が同名の外題で歌舞伎の脚本を書いて京都で上演されています。江戸では1726(享保11)年に中村座で上演された『婚礼音羽滝』(こんれいおとわのたき)があり、1762(宝暦12)年3月、大坂・中の芝居『清水清玄六道巡(きよみずせいげんろくどうめぐり)』が、後続の芝居に多大な影響を与えます。桜姫に魅せられた清玄は鳩を食いちぎりその血を啜(すす)ります。寺を追放された清玄は「破れ衣に破れ笠」という惨めな姿となります。このスタイルは今日では清玄を象徴する定型になっています。
この世界で異色の芝居が『桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)』で、清玄ではなく桜姫を主人公にしたのが新鮮でした。桜姫のキャラクターには当時、公家出身と身分詐称した遊女が、奉行所に摘発された事件が巧みに取り入れられています。『隅田川花御所染(すみだがわはなのごしょぞめ)』は「隅田川の世界」と「鏡山の世界」「清玄桜姫の世界」を綯い交ぜ(ないまぜ)にした芝居で、通称「女清玄」。主な登場人物は入間家息女花子の前こと清玄尼(せいげんに)と吉田松若(よしだまつわか)、忍ぶの惣太(しのぶのそうだ)などです。(安冨順)

【写真】
『桜姫東文章』[左から]桜姫(中村福助)、清玄(片岡愛之助) 平成24年8月新橋演舞場
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