のりもの 乗物

駕籠(かご)や輿(こし)、舟などの乗物も小道具である。駕籠は人が座る部分を一本の棒に吊るして、複数人(大抵は2人)で棒を前後から担ぐ形で人を運ぶ。大名など身分の高い人が乗る大名駕籠、庶民が使う町駕籠、罪人の護送用である唐丸駕籠などいくつかの種類がある。駕籠舁(かごかき)も俳優が演じるが、人を乗せて運ぶのはなかなか難しく、熟練が必要。ちなみに、「雲助」は駕籠舁の別称で、職業柄、気の荒い男が多いとされる。
輿は主に貴人が乗るためのもので、持ち手を付けた台の上に人が乗る屋台を載せ数人が持ち上げて運ぶ。『良弁杉由来』二月堂の場で、良弁上人と渚の方が実の親子だと判明した後、良弁自身が乗ってきた輿に母を乗せる場面や、『菅原伝授手習鑑』道明寺の場で菅丞相(の木像)を乗せるのに使われる。
牛車は大型なため大道具が準備する。平安時代には貴族の乗物としてよく使われた。牛が曳くのでスピードは出ないが、機動性よりも権威を示すことを重視したためらしく、華美な装飾が施されていることが多い。やはり『菅原伝授手習鑑』の加茂堤と車引の場などで登場する。(橋本弘毅)

【写真】
おかるを乗せた駕籠を止める勘平
『仮名手本忠臣蔵』六段目 [左から]早野勘平(市川染五郎)、女房おかる(中村七之助) 平成25年12月歌舞伎座