あくたい 悪態

悪口や憎まれ口といったところですが、目の前にいる人物に向かって思い切り辛辣な言葉を浴びせ、周りにいる者あるいは観客にも一種の爽快感を与える、歌舞伎特有ともいえる大胆なせりふ術です。よく知られるところでは『助六』の揚巻。「この揚巻が悪態の初音」とわざわざ断った上で、恋人助六と客の髭の意休を比べて「こちらは立派な男ぶり、こちらは意地の悪そうな、たとえていわば雪と墨」と言いたい放題の悪態をつきます。この演目では揚巻のほか助六、意休、くわんぺら門兵衛などほとんどの人物が悪態をつき、ストーリー展開というよりもその悪態の応酬が眼目といえるでしょう。(金田栄一)

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三浦屋揚巻の「悪態の初音…」 
『助六曲輪初花桜』三浦屋揚巻(坂東玉三郎) 平成21年12月南座