たちまわり 立廻り

劇中での闘争場面を立廻りといい、歌舞伎以外の演劇でもよく使われますが、歌舞伎の立廻りは一人の人物に大勢で掛かるというのが基本型で、リアルな戦闘場面というよりは様式美を見せる舞踊的な要素が大切にされています。シン(主役)の役者はあまり動かずに要所々々で見得をすることが主で、その周りで捕手など大勢のカラミがいろいろとアクロバティックな動きを見せます。時には捕綱を使って綾取りのように複雑なトリックを見せたり、梯子(はしご)を使ってダイナミックで見た目にも美しい動きを取り入れたり、また斜めになった大屋根の上での立廻りなど、工夫がいろいろと伝えられて、立廻りは観客を酔わせ楽しませる重要な見せ場となっています。立廻りの間には比較的ゆっくりな三味線の演奏が付けられることが多く、この演奏に乗って舞うように演じます。同じ演目でも、立廻りの演出はその都度変わることがあり、見逃せません。(金田栄一)

【写真】
『青砥稿花紅彩画』弁天小僧菊之助(尾上菊之助) 平成26年2月歌舞伎座