くろご 黒衣

舞台上で俳優の演技を補助する後見の一種で、黒一色に身を包んでいるのでこう呼ばれます。「くろこ」ではなく「くろご」と発音するところに注意。黒は歌舞伎の舞台上では「見えない」という約束になっているので観客もそれを心得ておくことが大切。黒衣は芝居の中身や段取りを熟知し、わずかな一瞬を逃さずに動作するので、これは裏方の職分ではなく、その俳優の弟子がつとめます。すなわちこの人たちも俳優なのです。雪の場面では白一色の「雪衣(ゆきご)」、海や川などの場面では青色の「水衣(みずご)」「浪衣(なみご)」を着ます。
俳優のほかに大道具方と狂言作者も黒衣を着ます。舞台上の大道具を片付けたり、幕の開け閉めをする大道具の黒衣は動きやすいように裁着袴(たっつけばかま)を履いています。柝を打って舞台の進行役を務める狂言作者の黒衣は、役者の黒衣より袖や裾が長いのが特徴です。(金田栄一)

【写真】
雀をあやつる黒衣
『伽羅先代萩』 平成21年4月歌舞伎座