ゆきもち 雪持

歌舞伎の衣裳では、ときどき雪の積もった松や笹などの模様のついた衣裳が出てきます。こうした柄を「雪持」と呼びます(たいていの場合は、主役級の大きな役がこれを着ています)。
「雪持」は雪の重みにひたすら耐える笹の葉のごとく、本心を隠し、じっと耐え抜く心を表しており、『菅原伝授手習鑑~寺子屋』の松王丸は雪持松の衣裳、『伽羅先代萩~竹の間』の乳人の政岡は、雪持笹の打掛を着ています。どちらも繊細な刺繍で彩られた豪華な衣裳です。特に松王丸の衣裳は、さまざまな刺繍の技術が盛り込まれており、製作にも長い時間がかかります。(田村民子)

【写真】
『菅原伝授手習鑑』舎人松王丸(松本幸四郎) 平成22年4月歌舞伎座