歌舞伎の演目の分類で「時代物」といった場合は、主に江戸時代より前の時代の公家や武家社会を題材にしたものを指します。源義経や曽我兄弟など人気の高い歴史上の英雄がしばしば登場しますが、徳川時代のリアルな武家社会は幕府の禁止によって舞台化することが出来ないため、時代や登場人物の設定を平安~室町期に移すなど工夫が凝らされました。武将なども織田信長を小田春永、明智光秀を武智光秀と役名を微妙に変えるところが面白み。時代物は様式性に富み、演技もやや大仰な特徴もあるので、演技法として「時代に演ずる」という言い方もあります。(金田栄一)
【写真】
『新薄雪物語』[左から]腰元籬(中村時蔵)、幸崎息女薄雪姫(中村梅枝)、園部左衛門(中村錦之助)、奴妻平(尾上菊五郎) 平成27年6月歌舞伎座
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『新薄雪物語』[左から]腰元籬(中村時蔵)、幸崎息女薄雪姫(中村梅枝)、園部左衛門(中村錦之助)、奴妻平(尾上菊五郎) 平成27年6月歌舞伎座