きしゅりゅうりたん 貴種流離譚

洋の東西を問わず用いられてきた手法で、神のごとく高貴で王位などにあるものが不幸な境遇に置かれ、身をやつしてさすらう悲劇を描く物語のことです。しかしその中でも品位を失わず、正義を貫いて行くといったストーリーが展開されます。日本でも古くはヤマトタケルや光源氏などの逸話がありますが、歌舞伎では『義経千本桜』『勧進帳』などの源義経が代表的で、判官びいきという言葉も生まれています。また『義経千本桜』「すしや」に登場する平維盛などが挙げられます。維盛は、すし屋の下男に身をやつし、弥助と呼ばれていますが、実は三位中将平維盛です。町人ですが、『廓文章』の伊左衛門も紙衣を着たみすぼらしい姿となり、この系統と考えてもよいでしょう。(金田栄一)

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『ヤマトタケル』[左から]ヘタルベ(市川弘太郎)、ヤマトタケル(市川猿之助)、タケヒコ(市川右近) 平成24年6月新橋演舞場