なさぬなか 生さぬ仲

血縁のない親子の関係。養父母どちらにも使うが、どちらかといえば母と子にあてて使う場合が多い。大正初期、毎日新聞に柳川春葉が連載した新聞小説『生さぬ仲』が新派で上演され、大好評。義理ある仲ゆえにより深くかわされる親と子の情愛は新派悲劇の代表作の一つとなった。『仮名手本忠臣蔵』の加古川本蔵の妻戸無瀬は後妻で、先妻の娘小浪とは生さぬ仲、『源平布引滝』の小万は拾い子で育ての親の漁師九郎助夫婦と生さぬ仲、『青砥稿花紅彩画』の浜松屋幸兵衛と伜宗之助、『人情話文七元結』の長兵衛の女房お兼と娘お久、『双蝶々曲輪日記』の南与兵衛と母お幸も生さぬ仲である。義理の親子ならではの微妙な心理がドラマの重要な伏線となっている。(小宮暁子)

【写真】
『双蝶々曲輪日記』引窓 [左から]女房お早(中村魁春)、南与兵衛後に南方十次兵衛(尾上菊五郎)、母お幸(澤村田之助) 平成17年10月歌舞伎座