やたい 屋体

舞台上に飾られる建物。立派なお城の中や武家屋敷、豪華な御殿や華やかな廓、寺社仏閣、町屋やお店、富裕な町人の奥座敷から百姓、職人、庶民の家と、様々な種類があります。御殿にはまばゆい金襖や調度品などが飾られ、江戸時代の観客は普段は見ることもできない世界が垣間見られた。商家や庶民の家なども写実的に作られていて、現代の観客はいろいろな演目の屋体をみることで、江戸の住まいの雰囲気を知ることができます。平舞台に直接建てる屋体と、二重(にじゅう)と呼ばれる一段高い土台の上に組む二重屋体(にじゅうやたい)とに分けられます。土台の高さも尺高(しゃくだか)、常足(つねあし)、中足(ちゅうあし)、高足(たかあし)と四段階あります。客席からは見えませんが、いくつものパーツに分割して作られているので、場面転換や移動が大変にスムーズに行えるよう、工夫されています。(東功吾)

【写真】
『仮名手本忠臣蔵』七段目 祇園一力茶屋の場 歌舞伎座