ちりばな 散り花

歌舞伎に登場する花といえば何といっても桜でしょう。桜は山や土手に咲き誇る立木のほか、手に持つ枝、そして舞台に降り注ぐ散り花があります。『金閣寺』では縛られた雪姫の頭上や足元に吹雪のごとく桜が舞い、『義経千本桜』「花矢倉」では立廻りの華やかさを倍加、『一本刀土俵入』では幕切れに佇む駒形茂兵衛の姿を強く観客に印象付けます。ここで使われる散り花は紙の作り物ですが実物よりやや大きめに切られています。演技の中で舞台上に吊られた花籠を操作して降らせますが、舞台全体に降らせるときは主に大道具が担当しますが、演出上の工夫によっては俳優の弟子が簀の子に上がって降らせたり、部分的に扱う時は小道具が担当する場合もあります。(金田栄一)

【写真】
『番町皿屋敷』青山播磨(中村梅玉) 平成17年2月歌舞伎座