あいびき 合引

芝居の途中で、後見が合引と呼ばれる黒い台のようなものを持ってきて、その上に俳優が腰掛けることがある。この合引を準備するのも小道具の役割で、高合引、中合引など高さが異なるものが数種類あり、場面や役柄に応じて使い分けられる。一番小型で箱状になっている箱合引は、正座で座る時に使われる。合引に腰掛けることによって俳優の負担を減らすだけでなく、姿勢を立派に大きく見せる効果がある。
黒く塗られているのは、黒衣などと同じで「本来舞台上にないもの」という扱いである。つまり高い合引に腰掛けている場合でも、話の進行上では立っているのと同じなのである。
立役が使う合引には黒、女方が使う合引には赤の小さい座布団がついている。こういった細かい心づかいも演技を支えている。(橋本弘毅)

【写真】
箱状の箱合引と背の高い高合引