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たいしょくかんのせかい 大職冠の世界

中大兄皇子(なかのおおえのおうじ、のちの天智天皇)と中臣鎌足(なかとみのかまたり)が645(大化元)年に蘇我蝦夷(そがのえみし)・入鹿(いるか)父子を倒し、大化の改新を行い、鎌足はその最晩年、天皇より藤原姓と大職冠という位を与えられたことから、「大職冠」は鎌足の代名詞となりました。「大職冠の世界」の主要登場人物は鎌足、蘇我入鹿、天智天皇などです。「大職冠の世界」で現在、最もよく上演される作品は『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』です、鎌足は戦略的思考能力に優れた政治家として、超人的パワーを有する蘇我入鹿と対決します。また、天智天皇は盲目という設定になっています。その他の登場人物は、鎌足の娘の采女の局(うねめのつぼね)、彼女をかくまう久我之助(こがのすけ)とその恋人の雛鳥(ひなどり)。鎌足の息子の淡海(たんかい)は蝦夷の暴虐を避けて天智天皇を猟師芝六の家に案内します。久我之助の父の大判事(だいはんじ)と雛鳥の母の太宰の後室定高(さだか)は領地争いから不仲で、久我之助と雛鳥は三段目「山の段」(吉野川)で悲劇の死をとげます。四段目の三輪の里では、杉酒屋の娘お三輪は烏帽子折に身をやつした淡海に恋をして、入鹿の妹橘姫(たちばなひめ)と恋争いになり、嫉妬に狂ったところを鱶七(ふかしち)実は金輪五郎(かなわのごろう)に殺されます。吉野川や三輪山伝説を舞台にした古代のロマンにあふれた世界です。(安冨順)

【写真】
『妹背山婦女庭訓』[左から]荒巻弥藤次(市村家橘)、蘇我入鹿(市川左團次)、漁師鱶七実は金輪五郎今国(市川團十郎)、宮越玄蕃(片岡市蔵) 平成23年1月新橋演舞場
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