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そがものがたりのせかい 曽我物語の世界

『曽我物語』は領地争いから父・河津三郎祐泰(かわづのさぶろうすけやす)を工藤祐経(くどうすけつね)に殺害された曽我十郎・五郎兄弟が、18年の艱難辛苦の末に仇を討つ物語です。兄弟が曽我を名乗るのは、父の没後に母が曽我祐信(そがのすけのぶ)と再婚したからです。兄弟は1193(建久3)年5月28日、源頼朝が富士山裾野で催した巻狩の夜、最高責任者である祐経を討ち取ります。十郎はその場で殺され、五郎は捕らえられて首を打たれます。「曽我物語の世界」の主な登場人物は曽我十郎祐成(そがのじゅうろうすけなり)、曽我五郎時致(そがのごろうときむね)、工藤左衛門祐経、工藤の家来の近江小藤太(おうみのことうた)と八幡三郎(やわたのさぶろう)、兄弟の恋人の傾城化粧坂(けわいざか)の少将、大磯の虎、母満江(まんこう)、忠義の家来鬼王新左衛門(おにおうしんざえもん)とその弟の團三郎(どうざぶろう)などです。『曽我物語』は能をはじめ、人形浄瑠璃、多くの歌舞伎芝居の題材になりました。
歌舞伎に限ると、江戸で1720年代(享保)頃より毎春(正月)に「曽我物」上演が定着し「曽我狂言」と呼ばれました。歌舞伎では十郎が和事、五郎が荒事、そして本来は悪人の工藤祐経が立役(善人)となり、一座の座頭(ざがしら)が演じる役となりました。
今日でもよく上演される『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』は座頭で立役の工藤、和事の十郎、荒事の五郎、立女形の大磯の虎、若女形の化粧坂の少将、道化役を加味した立役の小林朝比奈(こばやしのあさひな)、実事の鬼王、敵役の梶原景時(かじわらかげとき)・景高(かげたか)父子らが登場します。まさに役柄の見本市です。
歌舞伎十八番の『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』では五郎が花川戸助六、十郎が白酒売新兵衛と変名して登場します。そのほか、舞踊に『正札付根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』、『雨の五郎』『春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)』などがあります。(安冨順)

【写真】
『助六由縁江戸桜』[左から]白酒売新兵衛実は曽我十郎(尾上菊五郎)、花川戸助六実は曽我五郎(市川海老蔵) 平成29年3月歌舞伎座
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