なりもの 鳴物

鳴物は、狭義の「お囃子(はやし)」とも称します。拍子をとったりして囃す(はやす)という言葉から生まれた言葉で、鼓、太鼓などの打楽器に笛を加えた演奏、またはその演奏者を指します。能と同様、小鼓、大鼓(おおかわ)、締太鼓、笛の四拍子を基本とし、長唄と共に長唄囃子連中として歌舞伎舞踊の伴奏を勤めます。楽器の中でも三味線は長唄に属し、鳴物とは呼びません。舞踊においては舞台上に登場して演奏します。これを出囃子と呼びます。
さらに歌舞伎の劇中では、効果音としての大太鼓、鉦(かね)など様々な打楽器を駆使し、舞台下手の御簾内で黒御簾音楽として場面の情景などをきめ細かく表現します。ここでは舞台演出上の大きな役割を担っています。特に大太鼓で浪音(海)、水音(川)や風音、雪音などの気象状況を表現し、動物の化身や亡霊など怪しい者の登場にドロドロなど、鳴物を駆使した歌舞伎特有の工夫は目覚ましいものがあります。(金田栄一)

【写真】
『藤娘』で舞台下手に居並んで演奏する田中傳左衞門社中