和歌や俳句を見てもわかる通り、七音五音が連なった七五調は日本語と最も相性が良く、心地よく響く理想的な言葉のリズムといえるでしょう。歌舞伎のせりふにも七五調は多く登場しますが、特に代表的なのは幕末から明治にかけて活躍した作者の河竹黙阿弥でしょう。黙阿弥のせりふはその多くが七五調の美文で綴られ、弁天小僧の「知らざあ云って聞かせやしょう、浜の真砂と五右衛門が」、お嬢吉三の「月も朧に白魚の、篝(かがり)もかすむ春の空」、河内山宗俊の「悪に強きは善にもと、世のたとえにも云う通り」など、どれも自然に耳になじんで観客を心から酔わせます。(金田栄一)
【写真】
『弁天娘女男白浪』[左から]日本駄右衛門(市川團十郎)、南郷力丸(市川左團次)、赤星十三郎(中村時蔵)、忠信利平(坂東三津五郎)、弁天小僧菊之助(尾上菊五郎) 平成20年5月歌舞伎座
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『弁天娘女男白浪』[左から]日本駄右衛門(市川團十郎)、南郷力丸(市川左團次)、赤星十三郎(中村時蔵)、忠信利平(坂東三津五郎)、弁天小僧菊之助(尾上菊五郎) 平成20年5月歌舞伎座