ぬればといろもよう 濡れ場と色模様

男女の色恋を表現した場面ということになりますが、そもそも歌舞伎に於いては発生当初からそういった表現描写が中心的に描かれ、特に上方では初期から「傾城買い狂言」に重きが置かれてきました。どちらかといえば濡れ場というとエロチックな色彩が濃く、単に恋愛的な場面や所作などは色模様と表現されます。また濡れ事を得意とする「濡事師」という役柄も江戸時代には確立していました。しかし直接的な表現は避けられ、男女の情愛を表現するひとつとして女が男の髪を梳くというものがあります。一方、女方の魅力と可能性を生かしたより官能的で写実的な場面も求められる中で、天明期、文化文政期、幕末と時代が下るにしたがって次第にきわどい描写や過激な場面が増えてゆきますが、それも明治期以降は歌舞伎の高尚化と共に、鳴りを潜めました。しかし戦後に復活された文化文政期の作『桜姫東文章』などはリアルな描写が評判になりました。(金田栄一)

【写真】
切ない忍び逢い
『天衣紛上野初花』[左から]大口抱三千蔵(中村時蔵)、片岡直次郎(尾上菊五郎) 平成22年11月新橋演舞場