はちもんじ 八文字

立役の歩く芸の代表格が「六方」ならば、女方の歩く芸は「八文字」がそれにあたります。吉原などの廓で花魁(おいらん)が客の待つ引手茶屋へ出向くのに豪華な行列を仕立てて行きましたが、この花魁道中での歩き方が八文字です。大きな三本歯の下駄を履き、その足の運び方が八の字を描くようになるので八文字といわれています。江戸の吉原では爪先が外に向く八の字なので「外八文字」、一方、上方では爪先が内に向く「内八文字」が決まりとされています。歌舞伎の演目では『助六由縁江戸桜』の揚巻、『籠釣瓶花街酔醒』の八ツ橋が、花道を使って華やかな花魁道中を繰り広げ観客の目を奪います。(金田栄一)

【写真】
『助六由縁江戸桜』三浦屋揚巻(中村福助) 平成22年5月新橋演舞場