はつはるきょうげん 初春狂言

正月の芝居とその演目で、「初芝居」「春芝居」「春狂言」とも呼ばれます。江戸の芝居では二代目市川團十郎が大当たりを取って以来、初春には吉例として必ず曽我物を出すことが決まりとなり、江戸三座とも足並みを揃えてそれに倣っています。上方での正月興行は「二の替り」と呼ばれました。これは十一月の顔見世に続く興行という意味で、しかし芝居そのものは顔見世以上に一年の中で最も華やかに重点が置かれました。江戸の曽我物に対し上方では傾城買狂言が決まりとなり、「けいせい」あるいは「傾城」の文字が必ず登場しています。現在の歌舞伎興行にはこういった決まりはありません。(金田栄一)

【写真】
『寿曽我対面』[左から]喜瀬川亀鶴(中村梅丸)、化粧坂少将(中村児太郎)、小林妹舞鶴(中村魁春)、曽我五郎時致(中村橋之助)、曽我十郎祐成(片岡孝太郎)、大磯の虎(中村芝雀)、八幡三郎行氏(中村歌昇)、工藤左衛門祐経(中村梅玉)、近江小藤太成家(中村松江) 平成26年3月歌舞伎座