いろあく 色悪

歌舞伎の役柄の中でも比較的後発で、文化文政期の頽廃的な世相を背景に四世鶴屋南北などの作者によって登場してきました。それまでの敵役とは趣を異にし、悪の華を咲かせて見る者を刺激し魅了します。色白の二枚目で色事の味を見せながら内心は残忍で冷酷、裏切られた女性は無残な姿となります。もっとも代表的なところでは『東海道四谷怪談』の民谷伊右衛門、さらに『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』の薩摩源五兵衛、『色彩間刈豆(いろもようちょっとかりまめ)』の与右衛門といった役があります。(金田栄一)

【写真】
『色彩間苅豆』腰元かさね(中村時蔵)、与右衛門(市川染五郎) 平成23年6月新橋演舞場