けしまく 消し幕

芝居の進行上で不要になったもの、特に死んだ人物などを舞台上から引っ込めるため目隠しとして使う幕を消し幕といいます。黒い幕または緋毛氈を黒衣(後見)が広げて人物を隠し、ゆっくり移動して舞台上から消し去ります。黒という色は歌舞伎において「見えていない」約束になっていますので黒幕を使うのが基本ですが、歌舞伎十八番をはじめ様式性の高い演目の場合は舞台全体の視覚的バランスから華やかな緋毛氈が用いられます。また『伽羅先代萩』床下で荒獅子男之助がせり上がる場面など、舞台のセリ(切り穴)から人物が登場してくる場合や、あるいは舞台上で俳優が化粧や扮装を変えるときなど、目隠しが必要な場合にこの消し幕が利用されます。(金田栄一)

【写真】
『一谷嫩軍記』 昭和47年4月国立劇場