弁天娘女男白浪 ベンテンムスメメオノシラナミ

登場人物

人物関係図

人物相関図

主な登場人物

弁天小僧菊之助【べんてんこぞうきくのすけ】
美形の盗賊で、江の島岩本院(江の島弁財天)の稚児出身のためか弁天小僧と呼ばれる。稚児のときから手癖が悪かったため追放され、兄貴分の南郷力丸と悪さをしている。通し上演で出る「初瀬寺」では、武家の若殿に化けて姫君を騙し、駄右衛門の手下となってからは、美しい娘に化けて強請を働く。通し上演には、極楽寺の屋根の上で、立ったまま腹を切るという凄惨な最期を遂げる場面がある。
日本駄右衛門【にっぽんだえもん】
盗賊たちの首領。親と生き別れになって盗賊に身を持ち崩した。実の子を捨てた過去がある。玉島逸当という立派な武士に化け浜松屋に客としてやって来て、弁天たちの正体を見破る。しかし実はこれが浜松屋の金すべてを盗み取る計画の発端。実在した盗賊日本左衛門から名をとったと言われる。
南郷力丸【なんごうりきまる】
出自は漁師で、弁天小僧の兄貴分となって二人組で悪さをしていたが、ともに駄右衛門の手下となった。娘に化けた弁天小僧とともに、コワモテのお供の若党・四十八(よそはち)と名のって強請の片棒を担ぐ。
忠信利平【ただのぶりへい】
駄右衛門の手下で、もとは赤星の家来筋だった。「初瀬寺」で百両の金を手に入れるが、稲瀬川の谷間で偶然赤星と出会い、赤星の境遇を聞いて金を渡そうとするが、逆に赤星から仲間にしてほしいと頼まれたいきさつがある。
赤星十三郎【あかぼしじゅうざぶろう】
もとは武家信田家の中小姓で優しい風情の色男。「初瀬寺」では、忠義のために百両の金を得ようと、回向料の百両を盗んで捕まえられる。稲瀬川では主筋の千寿姫の最期に居合わせ、自分も死んでしまおうとしたが忠信利平と出会い、盗賊の仲間となる。
浜松屋幸兵衛【はままつやこうべえ】
鎌倉雪の下の呉服屋・浜松屋の主人。実子がいたが、人ごみの中ではぐれてしまい、その後見つけた同じ年頃の捨て子を養子にして育てている。もとは武家の家来で、帰参を願って行方知れずの重宝「胡蝶の香合(こちょうのこうごう)」を探索している。
浜松屋宗之助【はままつやそうのすけ】
浜松屋の息子だが、実は養子で捨て子だった。養父の幸兵衛に孝行を尽くしているが、実父のことも忘れないよう、捨てられた時に着ていた着物の一部を襦袢(じゅばん)の片袖にしていたが、その実父とは…。
鳶頭清次【とびがしらせいじ】
浜松屋周辺を縄張りとする鳶の頭。浜松屋と武家娘たちの間で起きたトラブルを仲裁しようとする。
千寿姫【せんじゅひめ】
通し上演に登場する小山家の姫。許嫁(いいなずけ)が病死と聞いていたが、初瀬寺で許嫁に化けた美しい若殿(実は弁天小僧)にのぼせ上がる。しかし騙されたと知ると、来合わせた赤星十三郎の目の前で稲瀬川に身を投げてしまう。
青砥左衛門藤綱【あおとさえもんふじつな】
公正な裁き役として伝わる鎌倉時代の人物。本名題『青砥稿花紅彩画』も彼にちなんでおり、通し上演の大詰に登場して駄右衛門と対決する。藤綱は、滑川(なめりかわ)で落とした10文の銭を探索するため50文で松明を求めたが、10文を失えば天下の貨幣を永久に失うことになると言ったとか。このエピソードが大詰めに盛り込まれる。『摂州合邦辻』に登場する合邦道心は藤綱の息子。