菅原伝授手習鑑 スガワラデンジュテナライカガミ

登場人物

人物関係図

人物相関図

主な登場人物

菅丞相【かんしょうじょう】
主人公の菅原道真(すがわらみちざね)。右大臣を勤めたので菅丞相と呼ばれる。高潔な人物として尊敬を集めていたが、養女苅屋姫と皇弟のスキャンダルから謀反の疑いをかけられ失脚し、九州太宰府へ流罪となる。流罪が決まる直前、勅命により、菅家の筆法を弟子武部源蔵に伝えた。船出の前、河内の伯母の家では暗殺されそうになるが、自らの姿を彫った木像が身替りとなる。太宰府で、時平が王位を狙っていると知らされると雷(かみなり)に変じて都へ舞い戻り、悪人たちを焼き滅ぼす。
梅王丸【うめおうまる】
菅丞相の下屋敷をあずかる四郎九郎(後の白太夫)の子で、三つ子の長兄。三つ子が無事に育つのは珍しかったので、菅丞相は、それぞれ貴人の舎人(とねり)として仕えるようはからう。梅王は丞相に仕えたが、直情的な性格で忠誠心も人一倍強く、主君を追って太宰府へ旅立つ。
松王丸【まつおうまる】
三つ子の次兄。小太郎という息子がある。左大臣藤原時平に仕えたので、菅丞相失脚後は、ほかの兄弟と敵対することになる。菅丞相の子息菅秀才の顔を知っていたため、首実検の役目を命じられる。菅丞相と藤原時平のどちらにも恩ある松王丸は、菅秀才の命を救うために、女房千代とひそかにある計画を実行する。
桜丸【さくらまる】
三つ子の末弟。皇弟斎世親王に舎人として仕えた。温和な性格で、親王と苅屋姫の恋を叶えるために仲をとりもつが、それが原因で丞相が失脚したため自責の念に苦しみ、父・白太夫の七十歳の賀の祝(がのいわい)が終わった後に自害する。
八重【やえ】
桜丸の妻。桜丸とともに苅屋姫の恋を叶える手助けをする。夫が自害した後は北嵯峨で園生の前を守りながら暮らしていたが、時平方に討たれる。
苅屋姫【かりやひめ】
菅丞相の養女で、実母は丞相の伯母覚寿。斎世親王との恋のために、父丞相失脚の原因となってしまう。落ち延びた覚寿の屋敷で、父に一目会って詫びようと願うが…。
斎世親王【ときよしんのう】
病気の醍醐天皇の弟宮。苅屋姫と恋に落ち、桜丸の手引きで逢引するが、騒ぎになったことから姫とともに駆け落ち同然にその場を立ち去る。
三善清貫【みよしのきよつら】
時平に従う公家。斎世親王と苅屋姫の逢引を目撃し、菅丞相に謀反の意ありと疑いをかけて失脚させる。
左中弁希世【さちゅうべんまれよ】
公家で菅丞相の書の弟子。才能がないが、師から筆法を伝授されるのは自分と思い込んでいる。丞相の失脚と流罪が明らかになると、とたんに時平側に寝返ってしまう。
園生の前【そのうのまえ】
菅丞相の正室で、菅秀才という子がいる。不義で勘当された武部源蔵・戸浪夫婦のことも気にかけていた。丞相失脚後は北嵯峨に隠れ住むが松王丸に救出され、菅秀才と再会する。
武部源蔵【たけべげんぞう】
菅丞相の家来で書の弟子でもあったが、戸浪との不義を理由に勘当され、芹生(せりょう)の山里で寺子屋を営む。勅命を受けた丞相に召し出され、筆法を伝授される。秘かに菅秀才を匿うが時平方に首を討って渡せと迫られ、教え子のなかから身替りを立てる苦渋の決断をする。
戸浪【となみ】
武部源蔵の妻。もとは園生の前に腰元として仕えていたが勘当され、夫源蔵と共に寺子屋を営む。忠義のために決断をした夫の苦しい胸の内を聞いて、共に宮仕えの辛さを嘆く。
菅秀才【かんしゅうさい】
菅丞相と園生の前の間に生まれた子で、7歳。幼年ながら才気闊達。武部源蔵夫妻の子として芹生の里に隠れ住み、寺子たちと共に習字に励む。
判官代輝国【はんがんだいてるくに】
宇多法皇に仕える武士で、菅丞相を九州まで護送する役を負う。情に厚く、護送の途中で土師の里に住む伯母・覚寿のもとに一泊して別れの挨拶をすることも許す。
覚寿【かくじゅ】
菅丞相の伯母で、立田の前・苅屋姫の実母。厳格な性格で、苅屋姫を匿ってはいるが、丞相失脚の原因となった姫を許さず、杖で打ち据える。老女役としては「三婆」のひとつに数えられる大役。
立田の前【たつたのまえ】
覚寿の娘で、苅屋姫の実姉。宿禰太郎の妻。夫が土師兵衛とともに丞相暗殺を企んでいることを知って二人を止めようとするが、口封じのため殺されてしまう。
宿禰太郎【すくねのたろう】
立田の前の夫、土師兵衛の息子。欲深い人柄で、父とともに時平方と通じて丞相暗殺を企み、邪魔な妻の立田の前を殺す。
土師兵衛【はじのひょうえ】
宿禰太郎の父。時平方と通じ、丞相暗殺を企む腹黒い男。
春【はる】
梅王丸の妻。丞相の失脚後、八重とともに北嵯峨で園生の前を守護する。
千代【ちよ】
松王丸の妻。二人の間に小太郎という器量すぐれた息子がいる。松王丸は敵とみなされているので素性を隠して、小太郎を源蔵の寺子屋に弟子入りさせる。
白太夫【しらたゆう】
三つ子の父。もとは四郎九郎(しろくろう)という名だったが、七十歳を機に菅丞相に許された白太夫の名を名のる。丞相の所領佐太村の百姓で、菅家の下屋敷を預かり遺愛の梅・松・桜の木の世話をする。自らの七十の賀を祝ったあとは、はるばる太宰府の菅丞相のもとへ行って仕える。
藤原時平【ふじわらのしへい】
左大臣で、菅丞相の政敵。病中の醍醐天皇が政務を彼に任せているため、横暴に振る舞い、邪魔な存在である丞相を陰謀により追い落とす。「車引」では梅王丸・桜丸兄弟の襲撃にもびくともせず一睨みで委縮させるほど威光を見せつける。