鳴神 ナルカミ

作品の概要

執筆者 / 橋本弘毅
演目名 鳴神
作者 安田蛙文・中田万助(『雷神不動北山桜』合作)
初演 1742(寛保2)年1月 大坂・佐渡嶋長五郎座(『雷神不動北山桜』)
概要 全五幕の芝居『雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)』の四幕目に当たるが、ここと三幕目『毛抜』は独立した演目として上演されることも多い。七代目市川團十郎が選定した團十郎家の家の芸「歌舞伎十八番」の演目のひとつだが、七代目の子である九代目團十郎がこの種の演目を好まなかったこともあって、江戸末期から明治期にかけて上演が途絶えていた。明治43年に二代目市川左團次が新演出で復活上演したものが現行の台本となっている。主人公を女性(尼)に置き換えた『女鳴神』という演目もあり、こちらも時折上演される。

能の『一角仙人(いっかくせんにん)』などをもとにした先行作は、歌舞伎でもいくつか上演されている。この作品は、竜神を滝に封じ込めるほどの力を持つ高僧が、女性の色香に迷って戒律を破り、果ては騙されて術を破られてしまうというわかりやすいストーリーであるため、海外公演などでも人気の演目。高僧としての威厳を持って登場する鳴神上人が、宮中一の美女雲の絶間姫に次第に籠絡されていく様子や、後半は一転して荒事となって弟子たちを投げ飛ばしながら「飛び六方」で退場していくまで、歌舞伎十八番らしいスケールの大きさを感じさせる。
過去の
公演データ