籠釣瓶花街酔醒 カゴツルベサトノエイザメ

作品の概要

執筆者 / 金田栄一
演目名 籠釣瓶花街酔醒
作者 三世河竹新七
初演 1888(明治21)年5月 東京千歳座
概要 享保年間に下野(しもつけ)の国佐野の次郎左衛門という人物が江戸吉原の遊女をはじめ大勢の人々を殺傷した「吉原百人斬り」と呼ばれる実際の事件を元にしている。作者の三世河竹新七は河竹黙阿弥の高弟で、本作はその師匠の『八幡祭小望月賑(はちまんまつりよみやのにぎわい)~縮屋新助」を踏まえて、明治の世になって書き上げられた「縁切り物」。初演時は初代市川左團次の佐野次郎左衛門、四代目中村福助(後の五代目中村歌右衛門)の八ツ橋という配役で大好評を得、後に初代中村吉右衛門(次郎左衛門)、六代目中村歌右衛門(八ツ橋)へと受け継がれ、今も上演頻度の高い人気演目の一つとなっている。原作は八幕の長編だが、主人公次郎左衛門にまつわる因縁話を省いて、吉原での場面のみを上演するが、2011(平成23)年5月新橋演舞場では通し上演された。
「見染」では華やかな吉原の風景と豪華で艶やかな花魁道中の贅沢さが味わえる。「縁切り」では恋人と客の板挟みになった八ツ橋の葛藤と、愛想を尽かされた次郎左衛門の身を切られるような悲壮感、大詰の一度抜くと血を見ずにはおかない村正の名刀「籠釣瓶」の妖しさなど、随所に美と哀感があふれる。

●トップページ・タイトル写真
[左から]佐野次郎左衛門(中村吉右衛門)、兵庫屋八ツ橋(中村福助) 平成23年5月新橋演舞場

●ページ公開日 平成29年3月22日
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