三社祭 サンジャマツリ

観劇+(プラス)

執筆者 / 阿部さとみ

三社様

三社祭(さんじゃまつり)は浅草神社(通称:三社様)のお祭り。三社様は、漁師の桧前(ひのくま)浜成・竹成兄弟とその主人土師直中知(はじのまつち)の三人を祀った神社。浜成・竹成兄弟が、宮戸川(隅田川)で人型の像を掬い上げ、土地の文化人である土師直中知が観音像であることを教えたという。その後、土師氏は剃髪、自宅を改めて寺とし、供養と教化に生涯を捧げた。そこがのちの浅草寺となり、三人はその傍らに祀られ、浅草神社となった。

悪玉・善玉ここに注目

江戸時代中期に、人間が善人や悪人になるのは、善玉、悪玉のどちらかが魂となって体に入り込むからだという考えがあった。その悪玉を擬人化した「悪玉踊り」を、山東京伝が黄表紙『心学早染草』に書き、それを三代目坂東三津五郎が1811(文化8)年に『願人坊主』の中で踊って大流行。1815年(文化12)には『踊独稽古(おどりひとりげいこ)』という教則本にも取り上げられたほど。手足の動きの軌道を線で描くなど、一つ一つの振りが丁寧に図解されて、誰でも一人で踊れるように体裁になっている。一見して気軽に真似できそうな趣が楽しい。

二人の立役の舞踊

立役が二人、同じ比重の役どころで、しのぎを削る舞踊というのが珍しい。しかも全編を通じてテンポが良く、演者が休む間もなく展開する。衣裳も体の線、特に足の線がはっきりと見えるシンプルなもので、その技量が一目瞭然という見応えある作品になっている。