三社祭 サンジャマツリ

しなやかに躍動する海の男の筋肉!
踊って踊って踊り抜く、好敵手(ライバル)の競い合い。

浅草の観音様はその昔隅田川の川底から漁師の網にかかって祀られたという。
踊るのはその漁師の兄弟。軽快におどるうちに悪玉、善玉が取り付いて…。
全編テンポが良く、清元の洒落っ気あふれる舞踊。

あらすじ

執筆者 / 阿部さとみ

二人の漁師

場面は宮戸川。浪の音と共に幕が開き、浅葱幕が落ちると、漁師の兄弟・浜成、竹成が舟中に。浜成は網を、竹成は櫂を手にしている。体を左右上下に揺らした山車人形を模した動きから、今日の漁も浅草観世音様のお陰という振り、舟から下りて漁の収穫があふれる魚河岸や漁師の生活などを描く。

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可愛いお人の目を覚ます

二人は腰蓑を外し、当時の流行歌(はやりうた)で軽快に踊る。「あなたを思えばこそ長距離を命がけで来たのに…」「鐘を鳴らさないでください、可愛い人が目を覚ましてしまう」といった歌詞だが、その内容をそのまま描写するのではなく、軽快な旋律に合わせて、同じ動作やシンメトリーな振りを次々と展開する。そして、帰ろうとする男を女が止めたり、「憎(にく)や烏が啼くわいな…」と手をひらひらさせて烏の真似をするなど、二人が息ぴったりにリズミカルに踊っていく。


[左から]善玉(中村獅童)、悪玉(中村橋之助) 平成26年10月歌舞伎座
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善悪二つの玉

上空に黒雲がかかり、中から善と悪の二つの玉が現れて二人に取り付く。それぞれ善と悪と書かれた丸い面をつけた踊りになる。まず悪という字がついた人名を集めた「悪づくし」。悪七兵衛景清、悪禅師(公暁)、悪源太、源太繋がりで梶原源太へ移り、源太の恋人が蛭地獄へ堕ちた昔の物語となる。

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恋模様

二人が新内という浄瑠璃の太夫(語り手)と三味線弾きの真似をした後、しっとりとした曲調のクドキと呼ばれる恋模様になる。悪玉は手拭いを首に巻いて男役、善玉は手拭いを頭にのせて女役になって絡み、おかしみのあるクドキを繰り広げ、手拭いを手にして、この世は思い通りにならないものだ…と、締めくくる。

[左から]悪玉(尾上松緑)、善玉(尾上菊之助) 平成19年12月南座
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悪玉踊り

二人は両肌脱ぎをして、善玉が水色、悪玉が黒の衣裳になる。早いテンポの躍動感あふれる眼目のくだり。当時流行した「悪玉踊り」を、扇を使い二人で踊りこんでいく。立って飛び、飛んで座り、片足で跳び、座ったまま飛び、足を絡ませて回るなど…と舞台狭しと、二人の身体を存分に使って繰り広げられる見応えある場面。他の歌舞伎舞踊とは違った面白さに溢れる。やがて善玉と悪玉は消えて、二人は舟に戻って幕となる。

[左から]悪玉(中村勘太郎)、善玉(中村七之助) 平成17年12月歌舞伎座
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