寿曽我対面 コトブキソガノタイメン

父を討たれて十八年の艱難辛苦。
敵(かたき)工藤と対面した兄と弟は・・・・・。

鎌倉幕府を開いた源頼朝の幕下、臣下第一に位置する工藤祐経(すけつね)は、巻狩の総奉行も拝命した。それを祝うおおぜいの大名たちで溢れる工藤館に現われたのは、ある人物によく似た二人の若者。

あらすじ

執筆者 / 小宮暁子

一臈職(いちろうしょく)

工藤祐経は源頼朝の信任厚く、数多の大名の筆頭の地位である一臈職を賜り、富士の裾野で行なわれる巻狩の総奉行まで仰せつかった。その祝いの宴に大名たちがつめかけ、大磯の廓からも虎(とら)と少将(しょうしょう)ら、全盛の遊女たちが花を添えている。梶原景時(かじわらかげとき)景高(かげたか)親子を始め皆々から勧められて、工藤は高座(特別席)に着座する。

【左】化粧坂少将(中村七之助) 平成25年6月歌舞伎座
【中央1】大磯の虎(中村芝雀) 平成26年3月歌舞伎座
【中央2】工藤左衛門祐経(中村吉右衛門) 平成23年1月新橋演舞場
【右】[左から]梶原平次景高(片岡亀蔵)、梶原平三景時(片岡市蔵) 平成25年6月歌舞伎座
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仇敵との対面

その祝いの場に、朝比奈三郎の取りなしで、曽我十郎祐成(すけなり)と五郎時致(ときむね)の兄弟が工藤に会いにやってくる。二人は工藤を父の河津三郎を討った仇敵として、十八年間付け狙ってきて、ようやく工藤に対面することができたのだ。工藤は兄弟を見て、誰かに似ていると言う。兄弟はしかたなく、河津三郎の忘れ形見だと告げる。その場で工藤を討とうとはやる弟。工藤は兄弟に、紛失している宝剣・友切丸(ともきりまる)が見つかるまでは、仇討はできないと申し渡す。五郎が切歯扼腕(せっしやくわん)するところへ、曽我の忠臣鬼王新左衛門が友切丸が手に入ったと持参する。

【左】小林朝比奈(中村橋之助) 平成24年12月南座
【右】[左から]曽我五郎時致(市川海老蔵)、曽我十郎祐成(尾上菊之助) 平成25年6月歌舞伎座
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狩場の切手

工藤は勇む兄弟に「時節を待て」と言い、巻狩の狩場の通行切手を与えて、再会を約束する。総奉行の大事な役目を終えたら、兄弟に会おうという工藤の思いが込められている。工藤と兄弟は狩場での再会を約して別れるのだった。

【左】鬼王新左衛門(中村歌六) 平成26年3月歌舞伎座
【右】[左から]小林朝比奈(中村歌昇)、曽我五郎時致(坂東三津五郎)、曽我十郎祐成(中村梅玉) 平成23年1月新橋演舞場
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