祇園祭礼信仰記〜金閣寺 ギオンサイレイシンコウキ〜キンカクジ

作品の概要

執筆者 / 橋本弘毅
演目名 祇園祭礼信仰記〜金閣寺
作者 中邑阿契・豊竹応律・黒蔵主・三津飲子・浅田一鳥(合作)
初演 人形浄瑠璃―1757(宝暦7)年12月 大坂・豊竹座
歌舞伎―1758(宝暦8)年1月 京都・南側芝居(沢村染松座)、京都・北側芝居(中村粂太郎座)
概要 『祇園祭礼信仰記』は全五段の浄瑠璃。人形浄瑠璃では初演から大変な人気を博し、三年越しのロングラン上演になったという。天下を狙う松永大膳(実在の松永久秀)が、将軍・足利義輝を謀殺しすべてを手に入れかけるが、小田春永(実在の織田信長)やその家臣・此下東吉(のち真柴久吉、実在の豊臣秀吉)らの活躍で大膳の野望が阻止されるストーリー。現在歌舞伎では四段目の「金閣寺」の場だけが頻繁に上演されている。

「金閣寺」の最大の見せ場は「爪先鼠(つまさきねずみ)」と呼ばれる場面で、桜の大木に縛られた雪姫が足の先で桜の花びらを集め鼠の形に描くと 、それが実体化して縄を食いちぎるというファンタジックな展開。室町時代の絵師・雪舟が寺に入ったばかりの幼い頃、絵ばかり描いて経を読もうとしないので懲らしめのために柱に縛りつけられ、泣いて床に落ちた涙を足の指につけて鼠を描いたら、その本物と見まごうほどのみごとさに僧たちが感心して絵を描くのを許したという有名な逸話をもとにしている。

雪姫は数ある姫役の中でも特に難しいとされる「三姫」のひとつに数えられている。他にも、悪の華ともいわれるような大悪人としての魅力を描き出す大膳と爽やかさにあふれる東吉との対比や、金閣寺の屋体を舞台の大ゼリを使って上下させるスペクタクルなど、随所に見せ場がある名場面となっている。


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[左から]佐藤正清(中村錦之助)、松永大膳(坂東三津五郎)、此下東吉(中村梅玉)、春川左近(中村吉五郎) 平成24年1月新橋演舞場
過去の
公演データ