天衣紛上野初花~河内山と直侍
登場人物
人物関係図
主な登場人物
- 河内山宗俊【こうちやまそうしゅん】
- 江戸城に登城する大名の世話や茶会の取り仕切りなどを担当するお数寄屋坊主(おすきやぼうず)で、身分は高くないが将軍と直接話ができる直参(じきさん)という特権的な立場にあり。それを利用して強請たかりを繰り返している。肚の据わった男で、簡単には権力に屈しない悪党なりのふてぶてしさを持っている。金を用立ててもらおうと訪れた上州屋で偶然その娘の苦難を聞き、礼金二百両の約束で解決を請け負い、松江候の屋敷に乗り込む。
- おまき【おまき】
- 下谷長者町(したやちょうじゃまち)の質屋上州屋の後家。夫亡き後の店を切り盛りし、婿をとることも決まった一人娘のお藤の存在を頼りにしているが、娘が奉公先で窮地に陥り、何とか救い出そうと奔走するがうまくいかずに焦っている。
- 和泉屋清兵衛【いずみやせいべえ】
- 上州屋の親戚の骨董商。後見人としておまきを支えている。親戚一同を上州屋に集めてお藤を救出する相談をしていたが、相手が大名家なのでいい解決策は見出せず、二百両の大金を払って河内山に一任する。
- 松江出雲守【まつえいずものかみ】
- 松江藩の当主。将軍家の親戚という由緒ある家柄の大名だが、短気で身勝手な性格。自分の意に従わない浪路を手討ちにしようと追い回す。
- 浪路【なみじ】
- 上州屋の娘で本名はお藤。行儀見習いのために松江家に腰元奉公し、出雲守に気に入られ側室にしたいと申し出があったが、許嫁がいることを理由に断ったため、出雲守の怒りを買って屋敷に幽閉されている。
- 高木小左衛門【たかぎこざえもん】
- 松江家の家老。大家の家老らしく分別をわきまえ、主君の目に余る行動にも恐れず諫言する。河内山の正体が発覚しても、松江家の悪評が世間に広まるのを避けるため、あくまで使僧として帰す冷静な判断を下す。
- 北村大膳【きたむらだいぜん】
- 松江家の重役。自らの保身や出世ばかりを考えている男。日頃主君の登城に同行するため河内山を見知っていて、同じほくろがあったことから正体を見破るが、逆に河内山にやりこめられる。
- 宮崎数馬【みやざきかずま】
- 松江家の近習頭をつとめる若侍。主君が刀を抜いて浪路を追いかけ回すのを見かねて止めに入るが、かえって浪路との仲を疑われてしまう。
- 片岡直次郎【かたおかなおじろう】
- 「直侍(なおざむらい)」とも呼ばれる御家人崩れの小悪党。三千歳の情夫で、河内山の弟分。原作では、河内山が松江家に乗り込んだ時も、桜井新之丞(さくらいしんのじょう)という偽名で供侍として同行している。違法な賭博に関与したことが露見して捕手から逃げる途中、蕎麦屋で三千歳の噂を聞き、居合わせた丈賀に手紙を託して一目会ってから逃げようとする。
- 三千歳【みちとせ】
- 吉原大口屋抱えの花魁。直次郎と深い仲で、直次郎が行方知れずになったのを苦にして気病みになり、入谷にある大口屋の寮で静養している。立ち寄った直次郎と久々の再会を果たすが、一人で逃げるつもりと聞き、いっそ直次郎の手で殺してほしいと懇願する。
- 丈賀【じょうが】
- 三千歳の療治のために入谷の寮に通っている按摩で、雪の夜に蕎麦屋で直次郎と会い、手紙を三千歳に渡すよう頼まれる。
- 暗闇の丑松【くらやみのうしまつ】
- 博徒で直次郎の弟分。悪事が発覚して逃げる途中で偶然直次郎と再会し、自分の罪を軽くしたいがために直次郎を裏切って捕手に訴え出る。
- 喜兵衛【きへえ】
- 大口屋に出入りする植木屋で、寮番も兼ねている。表向きは監視役でもあるが、大口屋からは三千歳を自由にさせるよう言われている。自身や娘、息子が三千歳と直次郎に大恩を受けたことがあるため、後のことは気にせず二人で逃げるよう説得する。