伝統芸能の根元の儀式舞「三番叟」から飛び出した、最もエンターテインメント化された舞踊。糸で吊られているかのように重力を感じさせない技巧が光る。
能舞台を模した松羽目という背景。翁と千歳が厳かに登場。翁は位の高い神、千歳は若さを象徴する役。舞台中央にて深々と頭を下げ、人間が神に扮することへの畏敬の念を示す。千歳の若々しく颯爽とした舞に続き、翁が格調高く舞う。翁の定型、「袖を頭上にかざす型」や「両手を左右に大きく開く型」などが盛り込まれ、歌詞は能の「翁」の詞章をベースに、初春のめでたさや末永い繁栄を祝う歌詞で展開する。舞い終わった二人は再び礼をし、去って行く。
後見が登場。一礼すると背景が鶴を描いたものに変わり、能から離れることが暗示される。後見は三番叟と書かれた大きな箱を開け、中から三番叟の人形を取りだし、抱えて舞台中央へすえる。糸の綾をほぐしたり、調べたりして、糸のついた台(あや板)を舞台上空に上げ、これで上にいる人形遣いと人形が糸で繋がったことになる。そして後見が、三番叟の烏帽子の糸を引き上げるのを合図に音楽も賑やかになり、三番叟が動き出す。
「おおさえおおさえ喜びありや喜びありや」と三番叟のおきまりの歌詞で始まる「揉みの段」。三番叟は袖を翻し躍動的に踊り出し、大地を踏みしめる振りや大きく飛ぶ「烏飛び」などの型を軽やかに見せていく。ところが、途中で糸が絡まってしまい、三番叟は糸の撚れに従いくるくるくるくる…と廻り出す。どんどん加速がついて廻る三番叟、ついに糸がふつりと切れて、舞台に倒れ伏す。
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