連獅子 レンジシ

観劇+(プラス)

執筆者 / 阿部さとみ

獅子と牡丹

獅子と牡丹は良い組み合わせとして定着した図柄。古来より襖絵や屏風絵など、美術品にしばしば用いられている。百獣の王と百花の王という王様同士の華やかな取り合わせだ。また、獅子の身体に寄生し、獅子の命を脅かす「獅子身中の虫」は牡丹の花の夜露によって抑えることができるので、獅子は牡丹の花の下で安らげることから、安住の地の象徴でもあるとか。

親と子の表現

連獅子の親と子は、白と赤で区別される。前シテでは狂言師の持つ手獅子の毛としころと呼ばれる布の色に示され、後シテでは、頭(かしら)の色に表れ、親は白頭、子は赤頭で演じられる。こうした色の違いの他に、身体表現では、父は静かでどっしりとした動作であるのに対して、子は若さのある溌剌と動き、首をきゅっと曲げたり、かどかどの動作を鋭敏にする。こうすることで、老若の違いが現れ、親と子の役の違いが表出される。

平成の三人連獅子

平成になって『連獅子』に三人が登場するバージョンが派生している。大きく分けて2つのバージョンがあり、子獅子を二人にするものと、父母子の三人のものとがある。前者は十八代目中村勘三郎の親獅子、中村勘太郎(現・勘九郎)、中村七之助の仔獅子で、しばしば上演し喝采を浴びたが、2007(平成19)年10月新橋演舞場の舞台は、山田洋次監督によるシネマ歌舞伎として公開されている。
後者は『三人連獅子』と題され、父、母、子の一家の仲睦まじい情景を見せた後に、獅子の姿となって子落としが展開される。厳しい父、けなげな子ども、見守る母といった家族の情愛を色濃くしている。通常の松羽目ではなく、清涼山の石橋の大道具を用い、子落としも視覚的にわかりやすくなっている。上方舞の二世楳茂都扇性の振付で『楳茂都連獅子』とも呼ばれる。1908(明治41)年初演。楳茂都流四代目家元でもある片岡愛之助は2013(平成25)年10月大阪松竹座で父役を演じた。母は中村壱太郎、子は上村吉太朗であった。その後も演者を変えて上演が重ねられている。2009(平成21)6月には、親獅子・松本幸四郎、仔獅子・市川染五郎、孫獅子・松本金太郎の三人が登場する『門出祝寿連獅子』も上演されている。