紅葉狩 モミジガリ

紅葉狩にでかけた戸隠山で出会ったやんごとなき姫の正体は…。
維茂(これもち)さん、気をつけて!

一面の紅葉のなか美しく舞う姫が一転、鬼の本性をあらわして襲いかかる…。
竹本、長唄と常磐津掛け合いのぜいたくな音楽にのせ繰りひろげられるスペクタクルショー。
明治という新しい時代の息吹を感じさせる華麗な作品である。

あらすじ

執筆者 / 飯塚美砂

夕紅葉

紅葉が夕日に照り映える戸隠山。余吾将軍平維茂(よごしょうぐんたいらのこれもち)が従者の右源太、左源太とともに紅葉狩にやって来る。そこには宴を張る先客がいた。聞けば、やんごとない女人が侍女たちとお忍びでお出掛けとのこと。維茂が遠慮しようとすると、その高貴な姫自ら、是非ご一緒したいと誘う。そこまで言われてひいては男がすたる。言われるままに維茂は宴に加わることにする。

余吾将軍平維茂(尾上松緑) 平成18年12月歌舞伎座
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美女に美酒

さっそく酒よ、肴よと下へも置かぬもてなしぶりに、盃を重ねる維茂。腰元が舞を舞い、調子に乗った右源太、左源太も滑稽な踊りで座を盛り上げる。
なおも一献とすすめられた維茂は、その代わりにと姫に舞を所望する。恥ずかしがる姫だったが、局に手を取られ舞い始め、やがて二枚の扇をつかってあでやかに舞いすすめてゆく。だが、ふと見ると美酒に酔いしれたか維茂はうたた寝をしている。姫は用心深く何度か様子を窺い、維茂が熟睡したことを確認すると表情を一転させ、維茂と従者を残して一同とともに山へ姿を消す。

【左】[左から]更科姫(中村勘太郎)、局田毎(市村家橘)、余吾将軍平維茂(中村橋之助)平成20年8月歌舞伎座
【右】更科姫(中村福助) 平成24年5月新橋演舞場
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山神の警告

入れ替わりに眠りこける維茂主従の前に現れたのは山神である。この山奥には鬼神がいて人を取って喰う、こんなところで寝ていては命は風前の灯同然と、山神は杖を突き、肩をゆすり、地団駄踏んで維茂らを起こそうと躍起になるが、一向に目覚める気配がない。とうとうあきれ返って帰ってしまう。

山神(坂東巳之助) 平成20年8月歌舞伎座
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鬼女の出現

夜風にようやく目が覚めた維茂は、姫の正体を見届けようと山奥へ向かう。従者二人は恐れわななき、ころがるように山を下りていく。やがて維茂に追われて出てきたのは、形相凄まじい鬼女。勇猛な維茂もたじたじと押されていくが、平家に伝わる名剣小烏丸(こがらすまる)の力を借り、鬼神を追い詰めていく。

【左】[左から]戸隠山の鬼女(尾上菊五郎)、余吾将軍平維茂(中村梅玉) 平成16年5月歌舞伎座
【右】[左から]戸隠山の鬼女(市川海老蔵)、余吾将軍平維茂(尾上松緑) 平成18年12月歌舞伎座
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